チェーン店

カフェ巡りをしていると、見たことのないカフェに出会い、実はチェーン店だったということがたまにあります。私自身はチェーン店も良く利用させてもらいますし、チェーン店について悪く言うつもりは毛頭ございません。しかしながら、SNSやブログ等でカフェ巡りの投稿を目にすると、チェーン店は敬遠されやすい傾向にあることがわかります。そこで、ここではあえてチェーン店にスポットを当てて、そのお店の良さを紹介していきたいと思います。

定義

まずは、チェーン店の定義について触れていきます。チェーン店運営は1910年代にアメリカで生まれた文化だと言われています。日本にはそれより以前から暖簾分けという文化が根付いておりますが、厳密に言うとチェーン展開と暖簾分けは仕組みが異なります。店舗責任者の経営自由度が直営チェーン店よりも高いという点で、暖簾分けは強いて言えばフランチャイズに近いかもしれません。

では、直営とフランチャイズの違いとは。ご存知の方も多いと思いますが、それは先述した通り店舗責任者の経営自由度の違いにあります。直営店の場合、大元の企業理念や方針がそのまま適用され、人事も労務管理も全て本社が管理します。

一方フランチャイズは、本社企業とフランチャイズ契約によって運営されている加盟店を指します。基本的には本社企業の監督下にはなりますが、店舗責任者の裁量が多く、従業員の採用や労務管理も店舗責任者が行います。

このサイトは、あくまでもカフェ巡りブログなので、細かな労務上の規定は割愛し、フランチャイズ店もチェーン店として取り上げて参りますのでご了承ください。

また、この記事は2021年9月時点での情報を元に執筆しています。店舗状況などに変化が生じることもあると思いますことを重ねてご了承ください。

Starbucks Coffee(スターバックスコーヒー)

最も店舗数の多いカフェチェーンは、日本国内に1657店舗を構えるスタバことスターバックスコーヒーです。東京都内だけでも377店舗を擁する1971年にシアトルで誕生した、世界的に見ても最大級のコーヒーチェーンです。店名の由来はハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に登場する捕鯨船の一等航海士「Starbuck(スターバック)」と、シアトル近くのレーニア山にあった採掘場「Starbo(スターボ)」に端を発します。ロゴはギリシャ神話における海の怪物「セイレーン」がモチーフとなっています。

コーヒーが単なる嗜好品ではなく、生活の一部と変化していったセカンドウェーブの先駆者的存在のスターバックスは店内環境にもこだわり、椅子やテーブルは本社がメーカーに独自に発注したもので、市販はされておらず、アメリカの店舗では長時間の利用やPCの利用を制限することはないそうです。日本においてはその点は若干の相違が見られますが、それでもカフェの利用目的の幅を広げたことに変わりはないでしょう。仕事や勉強、もちろん読書など、幅広い利用が可能なのがスターバックスの特徴でしょう。

メニューに関して特筆すべきは、やはりフラペチーノを挙げないわけにはいきません。このフローズン状のコーヒー飲料「フラペチーノ」はフラッペとカプチーノから成る造語で、日本においてはスターバックスの登録商標となっています。

ちなみに、スターバックスの日本1号店は、銀座松屋の裏、松屋通り沿いにある「銀座松屋通り店」です。出店は1996年8月2日で、北米地区以外で初の出店です。余談ですが、中央通りを挟んで松屋の向かいにある2003年11月オープンのApple Store銀座店もアメリカ国外初となるAppleの日本1号店です。

DOUTOR(ドトール)/DOLORADO(コロラド)/EXCELSIOR(エクセルシオール)

日本国内に1092店舗、都内だけで370店舗を展開するドトールは日本企業としては最も店舗数の多いコーヒーチェーンです。店名の「DOUTOR(ドトール)」は、ポルトガル語で「医者」「博士」を意味し、創業者の鳥羽博道氏がブラジルのコーヒー農園で働いていた時の下宿先の住所に由来します。

1杯のおいしいコーヒーを通じて、お客様に安らぎと活力を提供する。

株式会社ドトールコーヒー 企業理念(https://www.doutor.co.jp/about_us/company/identity.html) 参照

以上の社是から分かるように、コーヒー1杯がお手頃価格で頂けるドトールですが、軽食も充実しています。通常カフェに置いてあるサンドイッチだけでなく、ジャーマンドックやミラノサンド、そしてミルクレープなどのデザートも充実しています。ミラノサンドはドリンクとのセットメニューの利用もでき、ビーフパストラミ&生ハムのAサンド、北海道産サーモンとエビのバジルソースのBサンド、照り焼きチキン〜お店仕込みのタルタルソース〜のCサンドが選べます。

ドトールコーヒーは「ドトール」以外にも「カフェ コロラド」や「エクセルシオール カフェ」などをチェーン展開しています。実は、1980年にドトールコーヒーショップ1号店を原宿駅前に出す前、1972年に神奈川県横浜市にカフェコロラドの1号店を先に出店していたのです。

「café COLORADO(カフェ コロラド)」はドトールのようなセルフサービスではなく、フルサービス業態の店舗で日本で40店舗、都内に15店舗を展開しています。

「EXCELSIOR CAFFÉ(エクセルシオール カフェ)」は、1999年、東京都港区芝浦に1号店を構えて始まった、ドトールよりワンランク上のカフェとして展開しています。若干、ドトールよりも高単価な設定がされており、インテリアなどもドトールよりも高級感を出した造りになっています。国内116店舗、都内78店舗を展開。

銀座四丁目交差点と言えば、和光、三越、NISSAN、そして交番側に佇むのが「Le Café DOUTOR(ル カフェ ドトール)」です。ドトールブランドの中で最高級を謳うカフェの立地は日本一地価が高いと言われる銀座四丁目交差点。そのため単価は「ドトール」や「エクセルシオール」よりも高めですが、それでも気軽に楽しんで頂きたいというコンセプトで営業しています。建物の構造上、円柱型の構造をしており、屋根付きのテラス席も特徴的です。

コメダ珈琲店

他のコーヒーチェーンの店舗数が最も多いのが東京都である中で、唯一「コメダ珈琲店」が全896店舗中215店舗を愛知に展開しており、東京は2位の71店舗を雍しています。それもそのはず、コメダ珈琲店は元々愛知県名古屋市に本社を置くコーヒーチェーンで、1968年に1号店が開業しました。

コメダ珈琲店の特徴として、中京式のメニューが挙げられます。中京地方は元々喫茶店激戦区として知られており、コメダ珈琲店でも午前11時まではモーニングサービスとしてドリンク1杯に対し、トーストが追加料金無しで付き、A.定番ゆで卵、B.手作りたまごペースト、C.名古屋名物おぐらあん、のいずれかが選べます。

モーニングだけでなく、ヒレカツやコロッケなどの大皿メニュー、シロノワールというデニッシュパンの上にソフトクリームを乗せたオリジナルデザートも有名です。

さらに、ハンバーガー、サンドイッチ、トーストのメニューが豊富で、軽食に留まらず、結構満腹になるほどのボリューム感を堪能できます。

長靴型のグラスで提供されるクリームソーダもコメダ珈琲店ならではです。

日本全土に展開しているコメダ珈琲店ですが、都内の店舗は池袋、新宿、渋谷などにあるものの、比較的郊外に多く展開している印象です。

TULLY'S COFFEE(タリーズコーヒー)

今となっては日本人にも馴染み深いタリーズですが、元々はスターバックスと同じシアトルに端を発するアメリカのコーヒーチェーンでした。1992年にアメリカで開業したタリーズですが、2018年に店舗を閉店し、現在はキューリグ販売のブランド名が残っている状態です。

しかし、日本においてはタリーズコーヒージャパンが2005年にアメリカ法人からライセンス権を買い取って独立していたため、倒産の影響を受けずに今でも営業を続けています。その翌年、タリーズコーヒージャパン株式会社は株式会社伊藤園の子会社となります。

先述した通り、タリーズもスターバックス同様シアトル発のコーヒーチェーンであり、「SEATTLE'S BEST COFFEE(シアトルズベストコーヒー)」と並んで「シアトル系御三家」とも呼ばれていました。

国内745店舗、都内217店舗を擁するタリーズの特徴は、アイスクリームのショーケースが設置されている所でしょうか。全店舗に置かれているわけではありませんが、アイスクリームメニューとアイスクリームのショーケースが他のカフェと大きく異なります。商品のラインナップも店舗によって若干異なりますが、定番のバニラからほうじ茶ティラミスなどの変わり種まで多数揃えています。

サンマルクカフェ

サンマルクカフェは、ST.MARC CAFÉと表記し、修道士聖マルクに由来します。ベーカリーレストラン「BAQET」や生麺専門の「鎌倉パスタ」などを手掛けるサンマルクホールディングスが運営するブランドの一つで、サンマルクカフェは国内364店舗、都内89店舗を有します。

サンマルクカフェの代名詞的存在メニューと言えば、そう「チョコクロ」でしょう。チョコレートを内容したクロワッサンは、季節によって通常のチョコレート以外の味も楽しめます。元々、ベーカリー事業を展開していたこともあり、現在もベーカリーレストランサンマルクを運営。サンマルクカフェのメニューとしてパン類が豊富な理由も肯けます。また、パンは各店舗で作られており、焼き立てを店頭に並べてくれるのもサンマルクカフェの特徴と言えます。

午前10時まではモーニングメニューとして、チョコクロをはじめとする特定のパンにドリンクが付いたお得なセットも利用できます。

星乃珈琲店

星乃珈琲店は、「洋麺屋五右衛門」「OSLO COFFEE」「うなぎ大黒屋」など、多種多様な飲食店を展開する日本レストランシステム株式会社(通称NRS)が手掛けるブランドの一つです。東京都渋谷区に本社を置く企業なだけあって国内277店舗、都内64店舗を有し、全店舗の半数以上が首都圏に集約されています。

星乃珈琲店の名物と言えば、焼き立てふわふわのスフレパンケーキではないでしょうか。柔らかい生地にホイップバターとメープルシロップが良く絡みます。

コーヒーやデザート以外にもビーフカレーやカツサンドなどの食事メニューも充実しており、幅広い層に支持されるカフェと言えるでしょう。

珈琲館/ベローチェ

珈琲館は1970年創業で国内208店舗、都内54店舗を有し、ベローチェは1986年創業で国内162店舗、都内98店舗を展開しています。両者ともC-United株式会社が運営するカフェで、前者はフルサービス、後者はセルフサービス形態の店舗として知られています。

珈琲館はフルサービスかつ各店舗でコーヒーを1杯ずつ抽出して淹れるというこだわりがあり、サイフォンを使って淹れられるコーヒーは味わい深さがあります。また、ホットケーキも有名で、銅板で一枚ずつ手焼きされる徹底ぶりはその豊かな風味にも活きています。

ベローチェはveloceと表記し、イタリア語で「速い」を意味します。迅速なサービスをモットーとしているベローチェは創業当初、効率重視目的でハイチェアを配した小型店が多く、今でもその名残を残しつつも現在はソファー席などを配置し、ゆっくり寛げる環境へと変化しています。

CAFÉ de CRIÉ(カフェドクリエ)

カフェドクリエは株式会社ポッカクリエイトが運営するコーヒーチェーンで、国内に193店舗、都内に62店舗を展開しています。元々は、1994年に愛知県名古屋市で誕生した企業で、第1号店は同年名古屋の伏見にオープンします。

1995年に市ヶ谷駅前店を出すことで関東初進出を実現します。同店舗は今でも千代田区五番町1-10で営業中です。

店名の由来は、カフェ文化を創造する(=createする)ことからくる造語です。ちなみに、create(創造する)のフランス語はcréerと書き、「クレエ」と読みます。店名のcriéは、泣き叫ぶという動詞「crier」の過去分詞形であり、店名を直訳すると「泣き叫びのカフェ」となってしまいます。

カフェドクリエはコンセプトを広げた新しい業態のカフェも展開しており、

  • 「CAFÉ de CRIÉ Plus」オムライスなどのライスメニューをプラス
  • 「CAFÉ de CRIÉ Grand」仕事ができるワークスペースを充実とオリジナルメニューを追加
  • 「Hôpital CAFÉ de CRIÉ」病院併設でバリアフリーや健康志向メニューを追加
  • 「livre CAFÉ de CRIÉ」書店併設で購入前の本も読める(※都内に店舗無し)

2021年9月現在、livreの店舗は都内には無く、首都圏では千葉県の柏高島屋ステーションモール店、茨城県のイオンモール土浦店が存在します。

上島珈琲店

上島珈琲店は、UCCグループの珈琲関連事業の一つで、国内に102店舗、都内に41店舗を展開しています。そもそもUCCという呼称は「Ueshima Coffee Co.,Ltd.」の頭文字に由来しています。

上島珈琲店の代名詞とも言える商品が「ミルク珈琲」です。通常カフェオレを作る際、コーヒーとミルクを5:5の割合で合わせるとこと、上島珈琲店ではコーヒー2:ミルク8という割合で作ります。これは、カプチーノやカフェラテのようなエスプレッソとミルクの配合と同じ割合です。それをわずか2割のダブルネルドリップコーヒーで風味豊かなカフェオレを現出できるのですから、上島珈琲店のコーヒーへのこだわりが伺えます。また、ミルクコーヒーベースというミルクと合わせて自宅でも簡単に店のカフェオレを再現できる商品が販売されており、無糖と加糖が選べる上に手頃で美味しいです。また、コーヒーマシンやキューリグ、コーヒー飲料など上島珈琲ブランドの商品が多く出ているのも特徴です。

古き良き日本の喫茶店文化を意識した内装とデザイナーの柳宗理氏がデザインしたカップカトラリー、椅子などはゆっくり落ち着いた時間を過ごすには最適です。

お店のロゴにもこだわりがあり、創業者の上島忠雄氏直筆の書体をモチーフとし、「原点に立ち戻る」という姿勢を反映し、珈琲の二文字の間にある赤い丸はコーヒーの実をイメージして作られました。

「コーヒーがもたらす豊かな瞬間(ひととき) PRECIOUS COFFEE MOMENTS」を味わっていただきたいという気持ちを込め、1933年神戸から始まった変わらぬ価値観を伝えています。

上島珈琲店のこだわり (https://www.ueshima-coffee-ten.jp/philosophy/shop) 参照

上島珈琲店のコンセプトに違わぬ豊かな瞬間を過ごせることでしょう。

ルノアール

ルノアールは1964年10月に設立された株式会社銀座ルノアールが運営するコーヒーチェーンで、国内87店舗展開し、都内に78店舗、残り9店舗は神奈川県に集約されています。同社は現在「喫茶室ルノアール」「Cafeルノアール」「Cafe Renoir」「ミヤマ珈琲」「カフェ・ミヤマ」「NEW YORKER'S Cafe」「瑠之亜珈琲」などを運営しています。

ルノアールの最大の特徴としては、新宿や六本木など、主要駅に隣接する形で展開しているにもかかわらず、席間隔にゆとりがあり、全体的に広々とした構造になっています。

ブランド毎にも若干の違いがあり、スタンダードなタイプの「喫茶室ルノアール」に、エスプレッソやカフェ・ラテなどがある「Cafe ルノアール」、セルフ方式の「NEW YORKER'S Cafe」などと用途に応じて様々なタイプの店舗を有しています。ちなみに、「NEW YORKER'S Cafe」は都内のみに展開し、神田駿河台、高田馬場一丁目、新宿エステックビル、水道橋東口、調布北口の5店舗が営業しています。

また、ルノアールの特徴の一つとして貸会議室事業「マイ・スペース」を手掛けており、比較的リーズナブルな価格で利用できます。

SEATTLE'S BEST COFFEE(シアトルズベストコーヒー)

シアトルズベストコーヒーは、タリーズの項でも少し紹介した通り、スターバックス、タリーズと並んで「シアトル系御三家」と呼ばれたコーヒーチェーンです。1968年にアメリカで開業し、日本には1999年に上陸します。九州旅客鉄道(JR九州)の子会社であるJR九州ファーストフーズが運営しており現在、国内に74店舗、都内に7店舗を展開。ブランドとしては、「SEATTLE'S BEST COFFEE(シアトルズベストコーヒー)」の他、シナモンロール専門の「CINNABON(シナボン)」とカフェ、バー、レストランが合わさった「VASHON(ヴァション)」などがあります。

日本法人がJR九州のため、東京よりも福岡県の方が店舗数が多いのが特徴です。ちなみにVASHONは日本橋兜町店のみで、CINNABONは都内に7店舗あり、これは福岡県が有する店舗よりも多いです。

まとめ

いかがだったでしょうか。コーヒーチェーンと一口に言っても各お店毎に様々なコンセプトやメニューを持って多種多様な創意工夫のもと、利用者の需要に応えているのが分かります。

他のカフェや喫茶店に無い、コーヒーチェーン最大の魅力は、誰でも気軽にいつでも迎えてくれるオープンな所ではないでしょうか。友人とのお喋りや、商談、一人黙々と勉強したり仕事したり読書に耽ったり、待ち合わせまでの時間潰しに利用したり、仕事前の朝に目を覚ますためにコーヒーをあおったり、その様々な目的に呼応する形で広く門戸を開いてくれる。それこそが、コーヒーチェーンの魅力の一つだと思います。

今回紹介したコーヒーチェーンはまだごく一部に過ぎませんが、今後も情報を更新していければと思います。